相続で揉めて欲しくないので生前対策を検討しているケース(生前対策)

(1)状況
お話を伺ったところ、Aさんには3人の子どもがおり、長男Bは東京、二男Dは福岡でそれぞれ就職し、家族共々生活をしています。その一方で長女のCは、私の近くに住んでくれてしばしば顔を出して何かと私の身の回りの世話をしてくれるとのことでした。
Aさんは、夫が既に亡くなっているので自分がいなくなると遺産を巡って争いとなることを憂慮してご相談に来られたとのことです。
(2)当事務所からの提案 & サポート
確かに、親が(その一方であれ)生存しているうちは、子供たちが自己主張することは比較的少ないですが、親の顔が見えなくなると途端に各自の我欲が顕在化してくる場面に出くわします。
特に特定の財産を特定の人にあげたいと思うときには、生前に贈与しておくと確実に思いが叶います。
特に、不動産のように高価なものについては、争いを未然に防ぎ、あげたい人にあげられる、という意味では「生前贈与」も有効な方法といえます。
しかし、不動産を生前贈与でBに名義変更するには、2%の登録免許税と3%の不動産取得税が課税されることになります。
仮に、1000万円の評価額の不動産であれば、50万円の現金を税金として納めなければなりません。
※相続人となる人に生前贈与をした場合、相続発生に伴い相続財産に加算する期間を、従来の相続発生前3年間から相続発生前7年間に伸長されます(税金に関するご相談については税理士にご確認ください)。
1.駆け込みで生前贈与を行って相続税の節税を図ることが難しくなります。
2.生前贈与に相続財産を加算する期間が相続発生前7年間に伸長されるのは、令和6年1月1日以降の生前贈与が対象となります。
3.令和5年までは、生前贈与を相続財産に加算する期間は相続発生前3年間のままです。
(3)結果・解説
今回のご相談では、名義変更を急ぐ理由が特別ないのであれば、「公正証書遺言」が費用の点(登録免許税が5分の1、不動産取得税が0)、も相続手続きの点(相続人のハンコが不要)からも有効と判断し、遺言書の作成を勧めました。
※遺言書が相続人間で不平等内容となる場合、「付言事項」に「なぜこのような遺言を遺すこととしたのか」ということを記載することで相続人の不満が解消されることがあります。そのような意味でも必ず付言事項を記載するように勧めました。
ちなみに、令和4年度の司法統計の資料では、家庭裁判所で扱った家事事件のうち33%が遺産総額が1,000万円以下で、遺産総額5,000万円以下になると全体の約8割となり、相続トラブルは相続財産の多寡で発生するものではありません。

これらの相続トラブルについても、財産を託す側が対策を立てておくことで回避できる問題でもあります。
また(遺言・家族信託・生前贈与といった)生前対策を行うためには、判断能力が必要となります。
認知症や病気などにより判断能力が低下してしまうと生前対策ができなくなる(もしくは非常に限られる)ことになります。どの生前対策が最良なのか検討するためにも、それらが理解できる健康なうちから生前対策を始めることがとても大切です。










